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照れたように視線を逸らしつつ言うカミルの言葉通り、前ボタンが二か所ほどずれていた。それでもルフィナのためにわざわざ着せてくれたその優しさが嬉しい。
「ありがとうございます。今夜からは、ちゃんと忘れずに服を着て眠るようにしますね!」
元気よく宣言したら、カミルは何故か困ったように手で顔を覆ってしまった。頬が赤くなっているので、照れているらしい。彼は案外照れ屋のようだ。
その時、ルフィナは昨晩の行為について確認しておかなければならないことを思い出した。
身体を起こして姿勢を正して座ると、カミルが何事かと怪訝な表情を浮かべる。
「カミル様、昨晩のことについてひとつお聞きしたいことがあるのですが」
「聞きたい、こと?」
「えぇ。私たち、無事に行為は成し遂げたと思うのですけど、カミル様の子種をいただいたかどうか記憶が定かでなくて」
まっすぐに見上げて問うと、カミルはぐっと低く唸って顔を背けた。
「それは……その」
「精を受け止める感覚は、特に初めての女性にはあまり分からないこともあると書物で読みましたわ。実際私も記憶を辿ってみたのですが、よく分からないのです。でも、男性側はご自分が精を出したかどうか自覚があるでしょう? そのあたりを確認しておかなければと思ったのですけど」
「えぇと、何というか……あれは」
「カミル様は、吐精された実感はおありです?」
「あ……えぇと、うん、ある、ある」
視線を逸らしたまま、カミルが何度かうなずくのを見て、ルフィナは顔をほころばせた。
「ということは、私のお腹の中にはカミル様のお子が宿っている可能性もあるのですね」
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