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「きみをどういう風に抱いたとか、そういうことを秘密にしておきたいという意味だ。ほら、きみに押し倒されたなんて知られたら、ちょっと恥ずかしいだろう」
「そういうことでしたら、承知しましたわ。昨晩のことは、二人だけの秘密ですね。何だかそれって、すごく親密な感じがして素敵」
単純なルフィナは、そんな些細なことにもときめいて両手を胸の前で組んだ。確かに行為の有無が大事なのであって、その詳細は他人に明かすことではないだろう。
「分かってくれて嬉しいよ。さぁ、支度して朝食を食べに行こう。両親も妹も、きみと食事を共にするのを楽しみにしているはずだ」
「はい!」
元気よく返事をすると、カミルの大きな手が優しく頭を撫でてくれた。
◇
「おはようございます、ルフィナ様。起きられないかもと心配してましたが、殿下は優しくしてくださったのですね」
身支度のためにやってきた侍女のイライーダが、揶揄うような笑みを浮かべる。彼女だけは、頼んでホロウードから一緒に来てもらったのだ。ルフィナを育ててくれた乳母の娘であるイライーダは、幼い頃から共に育ったので主従というよりも友人に近い存在だ。
「えぇ、とっても優しくしてくださったわ。でもね……」
「でも?」
「だめ、秘密。昨晩のことは、誰にも話さないってカミル様とお約束したの」
うっかり口を滑らしてしまいそうになったルフィナは、慌てて口元を押さえる。それを見たイライーダは、分かっているというように何度もうなずいた。
「お二人の仲がよろしいようで、安心しましたよ。アルデイルの方々は皆親切ですし、カミル殿下がルフィナ様のお相手で本当に良かったです」
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