愛せないと言われましても

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 アルデイルは獣人の国で、獅子獣人が代々国を治めている。王子であるカミルも、獅子獣人だ。彼の金の髪は獅子のたてがみのようだし、射抜くような鋭い金の瞳もしなやかな筋肉に覆われた身体も、肉食獣を思わせる。  対するルフィナは人族の国に生まれ育った。獣人に会ったのも、カミルと対面した時が初めてだ。確かに彼の言うように、ルフィナは小柄な方だし細く華奢だ。薄紫のふわふわとした髪にピンク色の瞳という容姿と儚げな雰囲気から、祖国では『ホロウードの妖精姫』と呼ばれていた。もっとも中身は見た目とは裏腹に、儚げでも繊細でもないのだが。    嫁ぐからには相手の国のことを理解する必要があるだろうと、アルデイルに関する書物は色々と読んできた。だが、これまでホロウードはアルデイルとの交流が一切なかったので、獣人族に対する理解が十分かと言われると正直なところ自信はない。  それでも、お互いを知ろうとすることは大事だと思う。ルフィナとカミルの結婚は、両国の関係改善の第一歩となるはずだし、そのためには無事に初夜を遂行しなければならない。初夜に抱いてもらえなかった花嫁なんて、ルフィナの立場がないではないか。 「確かに私は人族ですし、カミル様のように耳も尻尾もありません。ですが、それを承知の上でこの結婚を承諾してくださったのでは?」  ずいっと詰め寄ると、カミルはたじろいだように視線を逸らした。さっきから彼は、全然ルフィナのことを見てくれない。 「そ、それはもちろん。アルデイルはホロウードと良好な関係を築きたいと思っているし、きみがこうして嫁いできてくれたことも本当に嬉しく思ってる」 「でしたら」
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