ホロウードの妖精姫(カミル視点)

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ホロウードの妖精姫(カミル視点)

 ルフィナを交えた家族での朝食を終えて、カミルは執務室に向かった。結婚したばかりとはいえ、カミルは王太子。父である国王の補佐として日々忙しくしているのだ。それでも今日は昼から休みを取ったので、ルフィナとどこかに出かけられたと思う。  カミルが執務をしている間は、妹のアイーシャがルフィナの相手をしてくれるという。年の近い姉ができたとを喜んでいた妹がルフィナを傷つけるようなことはまずないので、安心して任すことができる。  なるべく早く仕事を片付けてしまおうと、カミルは机の上の書類に手を伸ばした。  一番上に置かれていたのは、ルフィナの祖国ホロウードと交わした、鉱石の輸入に関する資料。そこに書かれた王太子ヴァルラムの名前を見て、カミルは思わず顔をしかめた。  ヴァルラムは、外面はとてもいい男だった。感じの良い笑みを浮かべて、物腰も穏やか。表面上は、カミルとヴァルラムは非常に親しくなったように見えただろう。両国はこれから良い関係を築いていけると、周囲は信じたに違いない。  だが、カミルは彼がふとした瞬間に見せる冷たい表情に気づいていた。それは、自分よりも劣った者を見る時の蔑みの表情。ヴァルラムがちらりとカミルの耳や尻尾に視線をやるたび、彼の瞳の奥には微かに見下しの色がよぎった。
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