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姫君らしく淑やかな振る舞いを見せたルフィナは、兄とは違って獣人に拒否感はないようだった。当たり障りのない会話をしながらも、彼女はむしろ興味津々といった様子でカミルの耳や尻尾に何度も視線を投げかけていた。
試しにぴくりと耳を動かしてみれば、彼女は微かに目を輝かせる。そんなルフィナの小さな表情の変化を、カミルは好ましく思った。
せっかくだから二人きりで交流を深めてはとヴァルラムに提案され、カミルはルフィナと共にしばし過ごすことになった。
優雅な仕草でお茶を飲むルフィナは、妖精姫と呼ばれるに相応しい美しさだ。初対面の相手と婚約をすることを笑顔で受け入れる彼女からは、王女としての覚悟を感じる。その凛とした表情に、カミルは強く心惹かれた。
お互いに穏やかな挨拶を交わしたところで、カミルの耳は隣室で話すヴァルラムの声を拾った。
――あの獣人は、ルフィナを気に入ったようだ。何の役にも立たないと思っていたが、あいつは男心を掴む術だけは一流だな。さすが、あの卑しい平民の娘だ。
馬鹿にしたような声で、ヴァルラムはルフィナを貶す。部屋を隔てた状態で、まさかカミルに聞こえているとは思わないのだろう、ルフィナのことを鼻で笑いながら彼の話は続いていく。
――繋がりを濃くするためにも、ルフィナには結婚したら早いところ子を成せと命じたが、生まれてくる子供は獣の子なのだろうな。獣と縁続きになると思うと吐き気がしそうだが、アルデイルの軍事力だけは魅力的だからな。野蛮な獣人だが、あの役立たずのルフィナを引き取ってもらえると考えれば、それくらいは我慢すべきか。
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