愛せないと言われましても

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「でも、だめだ。俺は、きみを抱くつもりはない。痛い思いは……させたくないんだ」  カミルは頑なな表情で首を振る。それを見て、ルフィナの闘争心に火がついた。ここで引き下がったら、負けな気がする。なんとしても彼をその気にして、抱いてもらわねば。 「初めてが痛みを伴うことくらい、覚悟の上です。こう見えて私、案外痛みには強いんです。ですから心配ありませんわ」 「いや、無理だ……っ」 「カミル様が気遣ってくださるのは嬉しいですが、大丈夫ですって」 「こういうことは、急がなくてもいいと思う。俺はきみを大切にすると誓うし、時間をかけてだな……」  「王族でなければ、そうかもしれませんね。ですが、カミル様は王太子。お世継ぎを求められる立場なのは充分承知のことでしょう。つつがなく初夜を終えることは、当然だと思うのです。義務でもおざなりでも構いませんから、とにかく抱いてくださいませ」  さぁどうぞと夜着の胸元のリボンを解いてみせれば、薄く頼りないそれは微かな衣擦れの音を響かせて肌を露出させる。 「……っ、だめだ、む、無理だ」  拒絶するようなことを言っておきながら、カミルの視線が確認するようにちらりと胸に向けられたのをルフィナは見た。 「触るのも嫌なほど、私のことがお嫌いですか?」  あえて眉尻を下げ、しゅんとした表情で上目遣いをしてみれば、カミルは慌てたように大きく首を横に振った。 「そ、そんなことはないが、でも……っ」  必死に視線を逸らそうとしているが、カミルの視線は何度もルフィナの胸に注がれる。愛することはできないと言っても、身体は正直に欲望を示しているのだろう。
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