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満面の笑みでシーツに染み込んだ血を指さすと、カミルは戸惑ったようにうなずいた。彼はまだ、どこかぼんやりとした表情をしている。もしかしたら、まだ痛むのかもしれない。そういえば、女性より男性の方が痛みに弱いと聞いたことがあるなと、ルフィナはひとり納得してうなずく。
「痛くて死んじゃうかと思いましたけど、なんとか無事に終えられて良かったですわ。抱いてくださって、ありがとうございます! これで私たちも、ちゃんとした夫婦になれたという気がしますね! カミル様は、まだ痛みますか?」
首をかしげて尋ねると、カミルは慌てたように身体を起こしてガウンを羽織った。
「あ、いや、痛みはない、から大丈夫、だ」
「そうですか。ひとまず今夜の目的は達成しましたし、早めに休みましょうか。明日の朝食は両陛下とご一緒するのでしょう? 寝坊したら大変ですもの」
「え、あ、う……ん、そうだな」
何故か視線を逸らしたまま、カミルは何度もうなずく。そして、ルフィナの身体に毛布をかけてくれた。
「冷えると大変だから……、着ていてくれ」
「ありがとうございます。でも、カミル様もこちらで休まれるでしょう?」
カミルの優しさにときめきながら、ルフィナは隣で眠るであろう彼を招き入れるように毛布をめくった。その瞬間、彼は激しく咳き込んだ。
「だ、大丈夫だ。……俺は、その、少し仕事を思い出したから、ルフィナは先に休んでいてくれ」
「まぁ、お忙しいんですね。私に何かお手伝いできることはありますか?」
「いや、ない。きみは早く寝た方がいい。寝衣を着るのを忘れずに。風邪をひくと困るからな」
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