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愛せないと言われましても
「きみを、愛すことはできない」
低い声で宣言されて、ルフィナはぱちぱちと目を瞬いた。何やら衝撃的な言葉が聞こえたような気がするのだが。
戸惑っているうちに、彼の言葉は続いていく。
「だから、その……きみを抱くことはできない。すまないが、無理だ」
「え、嘘っ」
さすがに声をあげてしまったのは、仕方ないと思う。
だって初夜なのだ。皆の前で式を挙げて、盛大なパーティーでたくさんの人から祝福を受けて、ようやく二人きりになれた寝室で、そんなことを言われるとは思わないではないか。
念入りに身体を清め、繊細な刺繍の施された薄い夜着を身に纏ってベッドの上にいるこの状況で、抱けないと言われても困ってしまう。
それに、彼も寝支度を整えてここにいる。ガウンの合わせからたくましい胸元がのぞいているし、恐らく彼は下着すら身につけていない。この状況で、何を言い出すのだろう。
「……えぇと、カミル様。理由をお聞かせいただいても?」
首をかしげてそう問うと、膝を突き合わせて座る彼は困ったように眉を顰めた。
整ってはいるが普段から険しい顔立ちの彼は、まるで怒っているかのように見える。
真意を探るように、ルフィナはじっと彼の顔を見つめた。
カミル・アルデイル。彼はここアルデイル王国の王子であり、ゆくゆくはこの国を背負って立つ存在だ。
ルフィナはホロウード王国の王女で、カミルのもとに嫁いできた。いわゆる政略結婚というやつだ。
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