1人が本棚に入れています
本棚に追加
クラスの人気者
自分の顔の良さは知っている。ナルシストとかそういうことではなく、昔から顔がいいとよく言われた。
そして家がそこそこお金がある家であることも分かっている。
だけど俺はそれを鼻にかけるような態度はとったことがないし、人と話すことが好きだからいろんな人と話をする。
人気者になりたいとか、注目を集めたいとか、そんな風には思っていないのだけど、気が付けば自分が教室の中でそんな立場にいることを知った。
クラスの人気者。家が裕福。顔がいい。
そんなものに花の蜜を集める蜂のごとく寄り集まってくる人はまぁまぁいるわけで。
少し距離が縮まれば俺を好きだなんて言ってくる。
最初の頃は本当に俺を好いてくれているのだと思って告白を受け入れたのに、付き合ってみれば「意外とケチなんだね」とか言われる。
ケチってなんだよ。なんでデート代を俺が全部持たないといけないわけ?
プレゼントくれないと拗ねられても、記念日でも何でもないじゃないか。
ある時はその子の友達とこんな風に話す彼女もいた。
『ねぇねぇ、結城くんと付き合ってるってほんと?』
『そうだよ。いいでしょ~』
『人気者と付き合えるってすごいね!』
『でしょ。結城ファンから妬ましそうな視線はちょっと嫌だけど、今まで結城に付きまとっておきながら相手されなかったあいつらの悔しそうな顔はちょっと面白いよ』
ステータスにしか興味がないのだと思ったら、怒りで熱くなるよりもスッと心が冷えるのを感じた。
俺はその会話を聞いたことを本人に伝え、そんなことを考えてた君とはもう一緒にいたくないと別れを告げた。
泣いて縋ってくる彼女に何の情も湧かなかった。
最後の最後には『最低! 顔が良くて人気者だからって調子に乗んな!』と吐き捨てられた。
その言葉に俺は冷たく低い声で『それを気にしていたのはお前だけだ』と八つ当たりしてしまったのは、今でも申し訳ないと思うし自分が恥ずかしい。
俺は純粋に俺を好きになってくれる人と恋がしてみたかった。
あの一件で人間不信になったということもないし、人脈を広げるのは楽しい。
他にも何度か、この人ならと期待して付き合ったことはあるけれど、皆俺を好いてくれているわけではなさそうだった。
俺は長く続かない恋を諦めた。
最初のコメントを投稿しよう!