1人が本棚に入れています
本棚に追加
「でもさ、それってあんたから好きになったことないわけ?」
目の前でうどんに乗っていたちくわ天を咀嚼し飲み込んだ青井が言った。
大学の学食で、あんたから色恋ってなぜか想像つかないんだよね、なんて言われたのが事の始まり。
俺は彼女に恋愛に嫌気がさした経緯を話して聞かせていた。
「……ないかも」
「付き合ってからその子を好きになったりした?」
「それはあったよ。……本音というか本性を知るまでは」
「あぁ……なるほど」
青井は合点が言ったと言いたそうな顔をした。
青井は俺をステータスで見ないし、付き合ってなんて告白もしてこないし、いい友達だと思っている。
「男女問わずいろんな人と仲良くなるわりにどこか線を引いてるのはそれか」
青井はそう言ってズルズルとうどんをすすった。
ここのうどんは出汁がとても美味しい。青井もそれを気に入っているようで、種類は違えど毎日うどんを食べていた。
かくいう俺も今日はきつねうどんだ。
「まぁでもさ、あんたから誰かを好きになることがあったら、告白してみたら? 何を言われても手放したくないって思える人ならだけど」
青井は肩を竦めて出汁を飲み干した。
「ふぅ。ごちそうさまでした。じゃああたし図書館行くわ。返却今日までなんだよね」
「あぁ、うん。行ってらっしゃい」
席を立った青井はリュックを肩にかけ、お盆を持って去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!