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「何を言われても手放したくない人……」
俺の呟きは騒がしい食堂に飲み込まれていった。
青井が言うような人がいればいいけど……そんな人と出会えるだろうか。
そりゃあステータスを気にしない人と恋をしたいと思うけれど、べつに恋をしなくたって生きてはいけるし……。
今の俺は特別恋愛を求めてはいない。
……けど。
青井は俺をステータスで見ないし、遠慮なくズバズバとものを言うし、竹を割ったような性格が一緒にいて心地いい。
「え、まさか」
俺って青井が好きなのか?
食堂の出口に視線をやれば、ちょうど青井が出て行くのが見えた。
閉まっていく扉と遠ざかって行くブルーのパーカーにいてもたってもいられなくなった。
俺はさっさと残りのうどんを食べると、鞄をひっつかんだ。
食器を返しに行くのがこんなにも煩わしく思ったのは初めてだ。
「ごちそうさまでした!」
「はいよ~」
食堂のおばちゃんにした挨拶の返事を背中で受けながら、俺は小走りで食堂を出た。
図書館がある棟へ歩いていく背中が遠くに見えた。
「青井!」
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