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メリナside1 尻尾ひとつ動かさない旦那様に愛されたい
「はぁ? いまだに旦那様と添い寝しかしていないんですか」
「しー! 声が大きい!」
しかめっ面をしている侍女のノーラの口に、メリナは立てた人差し指を近付けた。
週に一度、メリナの私室で催される二人だけの秘密のお茶会であるため、他に人はいない。それでも、どこからか今の会話が漏れてしまわないかメリナは心配だった。
「旦那様と喧嘩でもなさったのですか?」
ノーラの問いに対し、メリナはうつむき、いじいじと自分の髪を指に巻き付ける。赤毛混じりの金髪は光の加減によって淡い桃色に見えた。
「喧嘩はしていない、と思う。オズウェル様は口数の少ない方だから、もしかしたら気付かないうちに機嫌を損ねていたのかも」
夫であるシリル州伯オズウェル・シャムスの冷たくも精悍な顔を思い出し、メリナはため息をついた。
嫁ぎ先であるカダル帝国と、メリナの生国とは爵位が異なる。「州伯」というのは侯爵に相当するものらしい。
オズウェルは統治するシリル州の騎士団長も兼ねている。そのせいなのか、他人に厳しく、自分にはさらに十倍厳しい人だった。
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