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オズウェルside1 妻が可愛くてもげるほどつらい
「はぁ? 夫婦なのにまだやってもいないって、どういうことだよ」
小馬鹿にしたような友人の顔を見た瞬間、オズウェル・シャムスはひどく後悔した。
私的な相談などするべきではなかった。誰かに話そうなどと考えたこと自体、自分らしくない。気の迷いだ。
「下世話な物言いをしないでくれ」
オズウェルはテーブル越しに対面して座る友人――副団長のルーカスをにらみ、シャツの襟元を緩めた。蒸留酒の入ったグラスに口をつける。
オズウェルの私室であるこの部屋にいるのは、自分とルーカスだけだ。酒とつまみを配膳させた時に、「小一時間ほど部屋に近寄るな」と侍女には言い含めてある。
(まだ日が高いというのに酒に逃げたくなるなど、本当に追い詰められているな)
ちりちりと焼けるような刺激が喉をおりていくのを味わいながら、オズウェルは自分の情けなさをあざ笑う。
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