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(俺はいったい何を言っているのだろう。生まれてこのかた、今日ほど醜態を晒したことはない)
オズウェルは己の心と行動の乖離に頭痛を覚え、顔を隠すように額を押さえた。
深夜、メリナが眠るのを確認してから、手慰みをするのがオズウェルの日課となっていた。そうでもしないと収まりがつかない。
結婚するまでは性交も自慰もほとんど必要としない淡泊な性質だったのが嘘のようだ。今では欲望を吐き出すまでに何分かかるか、何度で収まるかが正確にわかる。情けない特技だ。
「は? はははっ! なにそれウケる! 我らが騎士団が誇る剣聖『黒狼オズウェル』がそんなガキみてーな悩みで頭抱えてんのかよ!」
「笑い事ではない! これでも深刻なんだ!」
オズウェルはテーブルに拳を叩きつける。チェイサーがこぼれ、耳や尻尾と同色の黒い被毛に覆われた手がぐしょりと濡れた。
ルーカスの態度に腹は立つが、笑いたくなる気持ちもわかる。もしも友人から同じ相談をされたら、さすがに笑いはしないがおおいに困惑はするだろう。
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