オズウェルside1 妻が可愛くてもげるほどつらい

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(俺はいったい何を言っているのだろう。生まれてこのかた、今日ほど醜態(しゅうたい)を晒したことはない)  オズウェルは己の心と行動の乖離(かいり)に頭痛を覚え、顔を隠すように額を押さえた。  深夜、メリナが眠るのを確認してから、手慰(てなぐさ)みをするのがオズウェルの日課となっていた。そうでもしないと収まりがつかない。  結婚するまでは性交も自慰もほとんど必要としない淡泊な性質(たち)だったのが嘘のようだ。今では欲望を吐き出すまでに何分かかるか、何度で収まるかが正確にわかる。情けない特技だ。 「は? はははっ! なにそれウケる! 我らが騎士団が誇る剣聖『黒狼オズウェル』がそんなガキみてーな悩みで頭抱えてんのかよ!」 「笑い事ではない! これでも深刻なんだ!」  オズウェルはテーブルに拳を叩きつける。チェイサーがこぼれ、耳や尻尾と同色の黒い被毛に覆われた手がぐしょりと濡れた。  ルーカスの態度に腹は立つが、笑いたくなる気持ちもわかる。もしも友人から同じ相談をされたら、さすがに笑いはしないがおおいに困惑はするだろう。
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