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「酔ってふにゃっとなった女の子って可愛いよな。演技かもしれないけどさ」
ルーカスはグラスをくゆらせ、ゆっくりと酒を流し込んだ。
「メリナはいつでも可愛い」
オズウェルは切れ長の瞳をより鋭くし、乱雑に自分のグラスに酒を注ぐ。
酩酊状態のメリナに情欲を感じたのは事実だが、普段の彼女も充分すぎるほど魅力的だ。控えめでやや物怖じするところはあるが、朗らかでそばにいると落ち着く――ある意味落ち着いてはいないのだが。
「いや急にめちゃくちゃノロケるじゃん」
引きつった笑みを浮かべるルーカスを見て、オズウェルは自分がおかしなこと――誰にも明かしたことのない本音を口走ったのに気付いた。顔が熱いのは酒だけのせいではない。
「初めて会った時から、ずっと好きなんだ」
オズウェルの意思とは裏腹に、唇は心の内を語ることをやめない。
「最初こそ、興味本位で会いに行っただけだったんだがな」
所用のために隣国のバートレット伯爵領に滞在していた時、伯爵の娘が結婚相手を探しているという噂を耳にした。しかもその令嬢はなにやらいわくつきであるらしい。
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