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理由はわからないが興味をひかれた。噂話など普段なら気にも留めないというのに。
バートレット伯爵の屋敷へとおもむき、遠目でメリナの姿を見た時はこれといって感慨はなかった。
聞いていた年齢よりも幼い顔立ちだと思ったくらいだ。帝国では見たことのない薄桃色の髪と翡翠の瞳は珍しかったが、それ以上の感想はない。
応接室に通され、メリナと向かいあった瞬間、一変した。
微笑んではいるが血の気のない人形のようだったメリナの顔が、色鮮やかに花開いた気がした。胸の内に、形容できない温かな感情が湧きあがる。
熱に浮かされたように、オズウェルは乞うていた。
――願わくば、彼女を我が伴侶に。
「恥ずかしーやつ。俺相手にくだ巻くんじゃなくて本人に言ってやれよ」
気まずそうに顔を赤くしたルーカスは、ナッツをオズウェルに投げつけた。
こんな状況であってもオズウェルの反射神経はいつも通り働き、ナッツを受け止める。ナッツは手の中で潰れ、油分で肉球がべたついた。
獣人は人間よりも腕力に勝る。
自分が触れたらメリナのか弱い身体が折れてしまいそうで、やわい肌を爪で傷付けてしまいそうで恐ろしい。
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