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「つーか夫婦なんだからしたっていいだろ、別に。むしろしない方が不自然じゃね?」
「彼女はああいった境遇だからな。男の視線に忌避感があるようだ。無理強いはしたくない」
「でも山のような求婚者がいた中で、奥さんはお前を選んだんだろ。ガキじゃないんだから、結婚の意味くらいわかってるはずだ」
「だが……」
優柔不断な己に苛つきつつも、オズウェルは言葉を濁した。
メリナは引きこもって暮らしていたため、言動に幼いところがある。内面に引きずられてか、見た目も実際の年齢より下に見えた。男女関係について理解しているのか疑わしい。
そんな相手に対して欲情してしまっている自分は――と突き詰めて考えると本当に嫌になる。
自分の些末な欲望のせいで彼女の笑顔を曇らせたくはない。
「お前にとっては一生を左右するくらい重大な悩みかもしれねーけど、俺から言わせてもらえば、二人で正直に話し合えばいいだけのことだ。それで仲がこじれたら、その程度の間柄だったって諦めりゃいい」
「……簡単に言ってくれる」
オズウェルはグラスを口元に運ぼうとして、やめた。チェイサーの方を手に取り、一気に飲み干す。
胸のつかえはまだ取れない。
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