メリナside2-1 淫紋の災い

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「私のほうこそ印のことを忘れて、ルーカス様をこんな……ごめんなさい、ごめんなさい」  じんじんと痛む手首を押さえ、メリナも頭を下げた。瞳がちりちりと熱く痛み、涙がこぼれそうになる。  オズウェルにもルーカスにも迷惑をかけてしまったことが申し訳ない。自分が何者であるかきちんと自覚を持っていれば、今回のことは起きなかった。 「本当にごめんなさい、オズウェル様」  メリナはおぼつかない足取りでオズウェルの横を通り過ぎ、声をかけてくれたノーラを無視して寝室へと逃げ込んだ。 ◇  寝室にある姿見に、薄桃色の乱れ髪の女の姿が映る。  メリナがドレスのスカートをたくしあげると、鏡の中の女もまったく同じ動作をし、足首から腹部までを露出させた。  邪魔にならないようスカートを咥え、鏡の中の自分の下腹部に刻まれたものを見つめる。  大きさは手のひらで隠れるほど。意匠化されたハートに(いばら)が絡みついたような紋様。呪いの証。
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