メリナside2-1 淫紋の災い

6/6
前へ
/52ページ
次へ
(淫紋がなくなっても、オズウェル様は私のことを妻として必要としてくれるのかしら)  ふと疑問がよぎった。  メリナの見立てでは、淫紋がオズウェルに作用している気配はない。かといってメリナ自身のことを好いていてくれているかはわからない。  考えたくはないが、なんらかの形で淫紋を利用するために(めと)ったという可能性もある。内乱を起こさせるために他国に献上されたという例も過去にあった。 (さすがにそれは、オズウェル様に失礼ね。でも本当は淫紋の影響で気にかけてくださるだけだったら……)  結婚してから――いや、婚約が決まった時からずっとメリナの心に重くのしかかる疑念が、刃先を鈍らせた。皮一枚だけがわずかに裂け、細い血の線がにじむ。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加