66人が本棚に入れています
本棚に追加
メリナside2-2 信じたい
「メリナ! 中にいるのだろう、ここを開けてくれ!」
どんどんどんっ! と叩き壊す勢いで寝室の扉がノックされた。
メリナはびくっと身体を震わせ、ナイフを取り落としてしまう。
誤魔化すべきかナイフを拾うべきか逡巡していると、先ほどの比ではない轟音がメリナの鼓膜に刺さった。
重厚感のあるウォールナットの扉が蹴破られ、黒い塊がものすごい勢いで部屋の中に入ってきた。
メリナは体当たりされるような勢いで、黒い塊――オズウェルに覆い包まれる。
「オズウェル、さま?」
「何をしていたかは尋ねない。だが、己を傷付けるような真似だけはやめてくれないか」
メリナを抱くオズウェルの腕に力がこもった。
身体よりも胸が苦しくなり、メリナはうめくように息を漏らす。
「私は、私自身に嫌気が差したのです。この印がある以上、オズウェル様にとって私は重荷でしかありません」
「俺がいつそんなことを言った?」
オズウェルの声に怒気がにじむのをメリナは感じた。
最初のコメントを投稿しよう!