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◇
元々は「我が子が誰からも愛されますように」という、子を思う純粋な願いだったのだという。
なんの気まぐれか、その願いを神が聞き入れ、バートレット一族の始祖の娘に愛の祝福を授けた。
下腹部に祝福の印を得た娘は、親の願い通りに愛され、やがて幸せな生涯の幕を閉じる。
そこまでは良かった。
以降、愛の祝福はバートレット一族の娘に必ず引き継がれた。
年月を経ることによって祝福は次第に強力になっていき、今や異性であれば誰彼構わず強制的に発情させる災い――淫紋へと変貌していた。
しかしその呪いのおかげで、平民に過ぎなかったバートレット一族は爵位を得るまでになる。
周囲はそれを「色を使った成り上がり」と揶揄し、陰では「卑しい犬の子の一族」と呼んで蔑んでいた。
そんな淫紋を持って生まれてしまったメリナを両親は不憫に思い、呪いを断ってくれる救いの主を探すため、広く見合いの相手を募った。
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