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扉を蹴り開ける音は、何事かと思うほど大きかった。侍女たちが様子を見に来たとしても不思議はない。
(いつから見られてたの……!)
メリナは頬の熱さを鎮めるように両手を当てた。
ノーラに尋ねればもちろん教えてくれるだろうが、知りたくもあり、知らないままでいたくもある。
「場所を変えよう」
オズウェルはメリナにだけ聞こえるように囁くと、メリナの身体を軽々と抱きあげた。
侍女たちから甲高い悲鳴が上がる。
「この後の予定はすべてキャンセルだ。スケジュールの再調整を頼む。明日――いや、明後日以降にまわしてほしい。騎士団員には自己研鑽に励むよう伝えておいてくれ。それが終わったら、皆も明後日まで休んでくれていい」
オズウェルは淡々と指示を出す。
抱きかかえられているメリナの方が居たたまれない。
ノーラ以外の侍女は突然の休暇に色めきつつ、メリナとオズウェルに好奇の目を向け続けている。
メリナは髪を手櫛で整えるふりをしながら顔を隠し、早くオズウェルがこの場から連れ出してくれるよう願った。
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