メリナside2-2 信じたい

6/6
前へ
/52ページ
次へ
 扉を蹴り開ける音は、何事かと思うほど大きかった。侍女たちが様子を見に来たとしても不思議はない。 (いつから見られてたの……!)  メリナは頬の熱さを鎮めるように両手を当てた。  ノーラに尋ねればもちろん教えてくれるだろうが、知りたくもあり、知らないままでいたくもある。 「場所を変えよう」  オズウェルはメリナにだけ聞こえるように囁くと、メリナの身体を軽々と抱きあげた。  侍女たちから甲高い悲鳴が上がる。 「この後の予定はすべてキャンセルだ。スケジュールの再調整を頼む。明日――いや、明後日以降にまわしてほしい。騎士団員には自己研鑽(けんさん)に励むよう伝えておいてくれ。それが終わったら、皆も明後日まで休んでくれていい」  オズウェルは淡々と指示を出す。  抱きかかえられているメリナの方が居たたまれない。  ノーラ以外の侍女は突然の休暇に色めきつつ、メリナとオズウェルに好奇の目を向け続けている。  メリナは髪を手櫛(てぐし)で整えるふりをしながら顔を隠し、早くオズウェルがこの場から連れ出してくれるよう願った。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加