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メリナside2-3★ 旦那様は大きなワンコ? 黒い狼?
メリナがオズウェルの私室に入るのはこれが初めてだった。
夫婦の寝室の他にそれぞれ私室を一部屋持っている。逆にメリナは、オズウェルを私室に入れたことがない。
厳めしい装丁の書物が納められた本棚が四つと、書見のための机。木製のテーブルと椅子が二脚。壁際には仮眠用と思われるシングルサイズのベッドが置かれている。どれも実用重視のデザインで飾り気は一切ない。
オズウェルによってベッドに腰かけるように降ろされたメリナはどうしても落ち着かず、無駄に周囲を見回してしまう。胸に手を当てると、キスされた時ほどではないがぐどくどくと速いペースで心音を刻んでいる。
当のオズウェルは「少し待っていてくれ」とだけ言い残して部屋から出て行ってしまった。
(やっぱりお酒を飲んでいらしたのね)
テーブルの上に複数のグラスと酒瓶、食べかけの酒肴と思しき物が置いてあるのが目につく。
(お酒の勢い、ということではないわよね……?)
一人でいると悪い方にばかり考えが向かってしまう。
メリナは頭を強く揺らし、被害妄想を振り払った。
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