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「それは……明け透けになったら困るだろう!」
オズウェルはやや上擦った大声をあげ、頭を抱えた。
「君が俺を選んでくれたのは、おそらく他の者より印の影響が少ないように見えたからだろう。だというのに、君の一挙一動に発じょ――いや、心を、奪われていては、軽蔑や失望されるのではないか、と」
オズウェルの手からするりと尻尾が逃げ、身を守るように腰のあたりに巻きつく。
「そんなにも私のことを思ってくださっているのに、軽蔑も失望もするわけないじゃないですか」
メリナは先ほどとは違う理由で声を揺らし、オズウェルに抱きついた。人間のものよりも少し高い位置にある、三角形の獣耳に唇を寄せる。
「明日までお休みでしょう? もっと知りたいです、オズウェル様のこと。私のことも、もっと知ってほしい」
オズウェルの耳がくすぐったそうにぴくりと動く。
紅玉の瞳と視線がぶつかった。
両方の手首をつかまれる。身体にオズウェルの重さがかかった。そのままベッドに倒れ込む。背中がぶつかった衝撃で一瞬だけ息が詰まる。
互いの距離が消えた。唇が重なる。息ができない。
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