メリナside1 尻尾ひとつ動かさない旦那様に愛されたい

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 真に愛し合う者と身も心も一つになれば、印の効力がなくなる――淫紋の継承者たちが残した手記の中に、そういった記述が散見された。抽象的かつ確証はないが、両親はそれにすがった。このままでは屋敷の中で娘を飼い殺すしかなくなってしまう。  見合いには噂を聞きつけた者が殺到したが、まともな対面にはならなかった。  メリナのいる部屋に入った瞬間に、ほとんどの者が淫紋の影響で文字通り腰砕けになり、退出させられる。メリナに対して卑猥(ひわい)な言葉を投げつける者もいれば、興奮のあまり飛びかかろうとする者もいた。 (本当に気持ちが悪い……)  メリナは込み上げてくる吐き気を押さえ込み、微笑を浮かべ続けた。  淫紋に引きずられない強靭(きょうじん)な精神を持つ者を見極めるには、どうしても直接対面する必要がある。「真に愛し合う者」は、少なくとも淫紋に惑わされた偽りの関係ではない。  人を惑わせないように屋敷の奥に引きこもり、息を潜めて生活してきたメリナにはあまりに刺激が強かった。場を設けてくれた両親には申し訳ないが、男性全体に対して嫌悪をいだいてしまいそうになる。
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