メリナside1 尻尾ひとつ動かさない旦那様に愛されたい

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◇ 「具体的に奥様から何かアプローチはなさったんですか?」  ノーラはケーキスタンドからハート型のクッキーを取り、メリナの顔の前でゆらゆらと動かした。 「出来るかぎりのことは……」  メリナはもじもじとスカートを握りしめ、上目遣いでノーラを見る。 「いつもより薄手のネグリジェを着てみたり、マッサージをしてみたり、一緒に寝ている時に寄り添ったり抱きついてみたり。そうそう、オズウェル様って尻尾が大きいから、仰向けに寝られないの。寝返りを打つと尻尾の分だけ掛け布団がずれて、朝になると床に落ちてしまっていることがほとんどなのよ。普段あんなにしっかりした方なのに、寝ている時は子供っぽいところが可愛らしくて。尻尾といえば、この前お手入れをさせてもらった時はとっても楽しかったわ! 太くて大きくて中がふわふわなの!」  どんな高級な毛皮にも勝るオズウェルの黒い尻尾の感触を思い出し、メリナはうっとりとする。そのせいでノーラが口をぽかんと開けて唖然(あぜん)としていることに気付くのが遅れた。  メリナはわざとらしい咳払いをして話を戻す。
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