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一番最初にサロンに参加した時は淫紋のことを根掘り葉掘り聞かれ嫌な気分になったが、今ではサロン総出でメリナのことを応援してくれている。メリナが奔放な淫婦ではなく、幽閉同然の生活を送ってきたことを知って同情してくれたらしかった。
「でも何をしても反応してくださらないの。獣人の方は表情に出なくとも、耳や尻尾に感情が表れるって教えてもらったのだけれど、ぴくりとも動かなくて。おまけに夜中になると、こっそりと三十分から一時間くらいどこかに行ってしまわれるし」
メリナが眠ったのを確認すると、オズウェルは物音一つ立てずに部屋から出て行く。結婚してから毎晩だ。
行き先が気になったが、オズウェルに感付かれずに尾行できる自信はない。それに、自分に気付かれたくないから何も言わずに行くのだろう。無理に行き先を暴くべきではない気がする。
「ねえノーラ。私おかしいのかしら」
メリナは重く湿ったため息をつき、ティーカップに手を添えた。まだほんのりと温かい。
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