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「ではこちらに署名を――」  花嫁花婿に、神父様がそう言う。  花婿はさらさら、と流麗な文字で教会の名簿に自分の名前を書く。  だが。 「どうしましたか?」  花婿は横の花嫁に問いかける。  彼女はぶるぶると震え、持ったペンを紙の上に落とそうとしない。  その時―― 「結婚やっぱりやめるわ!」  ペンを放り出し、花嫁はくるりと後ろを振り返り、ぎらぎらした視線を一人の男に向けた。  ――私の夫に。
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