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よし!そうと決まれば、とっとと慌て者のお顔を拝見して、厄介なことになる前に間違えに気付かせてお帰りいただきましょ。
と、腰を上げるも…
でもちょっと待て。
そうと決めつけ追い返すのは早計ではないだろうか?
驚きに任せてそう判断はしたものの、振り返って見ると聞こえて来た声は女性ではなかっただろうか?
ホントに、このままお帰りいただいても良いのだろうか?
ホントに後悔しないだろうか?
と、ついついよこしまなモノが芽生えてしまう俺の頭。
我ながらこんなにも落ち着いていられるのは、多分その声の主が若い女性と直感的に想像していたからの気がする。
俺のラッキードスケベ心は既に自分でも気付かぬうちに自動発動していたのである。恐ろしい事に。
確かに理性を自分に言い聞かせ記憶を追って見ても、男心を擽る女性の声であったのは間違いない。
決して裏声男子では出せない、籠りのない透明な声であった気がする。それに、掠れの無さからそんなに年配ではないと思われる。
もしかして自分でも知らない内に、俺にも人生初の彼女が出来ていたとか?
出張前の”ひょんな出来事”とかで。
しかし、どう記憶を絞り出してもそんな嬉しい出来事は記憶に刻まれてないし、仮に俺が記憶障害だったとしても残念ながら俺の甲斐性的には高確率でそんな”ひょんな出来事”は起こり得ないことは、俺自身が一番分かっている。
彼女など気の利いた存在は、生まれてこの27年間一度も存在したことが無いどころか、自慢じゃないが髪の毛一本も掠ったことも無いのだ。
じゃあ、前に住んでた人の彼女とかだろうか?
うん~でも、このアパートの間借りを始めて3年以上になるのに、今さらそんな奴が現れるとは思えない。
だったら、これは今までの地道な社会貢献に対して与えられたご褒美なのかもしれない。
そうだ、それしか考えられない。
神様が与えてくれるスペシャルラッキーデーは存在するのだ!
ついにそれが俺にやって来たのだ!!
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