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その風と言うは開けっ放しの玄関から吹いて来ており、そこにはもう一人、怖い男ではなく一人の中年の女性が顔だけを覗かせている。
俺の部屋の合鍵を持っている年相応の女性がだ。
しかも大爆笑で、身体の調子も良さそうである。
俺の目の前にいるのは、まさかまさかの10数年年ぶりに会う、子供の頃から母にそっくりと親戚中で言われていた海外に居るはずの従姉妹の丘恵理に違いない。
そして、本物は玄関から顔を覗かせ
「ヤッホー」
なんてふざけた挨拶を俺にして来やがる。
くそー、そう言う事か…
「やーくん、凄い久しぶりだね、元気してた?私、恵理、分かるよね」
そう、明るく言って来る目の前の若き日の母親擬きは相変わらず元気一杯である。
「やーくん、おかえりなさい。出張おつかれさま」
そう言ってずけずけと入って来る本物の中年も元気そうで、それは何よりだが、普通に連絡をして来れないのかと思ってしまう。
「はいはい、ただいま、取り敢えずその辺に座ってくれ、麦茶しかないぞ」
せっかく二人で来たのだから茶くらいはだしてやることにする。
しかし、俺の住むアパートに一度行きたいとはいっていたけど、こんなに急に来るとは。
しかも、ドッキリ付きで。
ホント悪趣味な親だ、まあいいけど。
<終わり>
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