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「大変申し訳ございません。お嬢さまの体調が宜しくないようで、夜遅くにも関わらず、彼女についておりました」
「……。リリィにつけていたメイドは何をしている?」
「それは……」
それについて、エリックは知らなかった。しかし、ここで知らないといえば、そのメイドはおそらく暇を出されてしまう。
——今晩起こったことは、普通のことじゃない。なんて説明しよう。
エリックが黙り込んでいると、背後でリリィが起き上がる音がした。
「お嬢さま!」
エリックは振り返る。しかしリリィはエリックを見ておらず、その瞳はカンバス卿を見つめていた。
「お父さま、大変です」
「リリィ、何があったんだ」
「私としたことが、あの絵に魅入られてしまったようです。エリックがここにいるのは、私を心配したせいだと思われます」
「あの絵だと! なぜ、私にだまって持ち出した!!」
カンバス卿は、顔を真っ赤にした。
エリックは話が見えず、ただ呆然としている。
「大変申し訳ありません、お父さま。私も、気づいたらここに……」
「まさか……あいつか!!」
カンバス卿はぐるりと振り返り、大股で廊下を歩き出した。
エリックとリリィは顔を見合わせたあと、カンバス卿の後を追った。
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