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「しまった、遅かったか」
三人は客室に着き、目を見開いた。
窓は開け放たれており、部屋はもぬけの殻だった。
「ブラッシュ様が、いないわ……」
リリィは口に手を当てた。
「急な来訪だと思っていたが……。まさか彼の目的があの絵だったとは……」
カンバス卿は、ベッドに腰を掛け頭を抱えた。
「旦那さま……」
エリックは何と声を掛けたらいいのか分からなかった。
――あの絵とは一体何のことだろう。
「エリック、図書室に『屋敷の絵』がないか、見てきてくれないかしら?」
「承知しました」
エリックは図書室に戻り、絵を確認した。
先ほど彼を恐怖に陥れた絵は、無かった。
* * *
絵が無くなっているのを確認したエリックは、客室に戻った。
「お嬢さま、絵はありませんでした」
「そう……」
リリィは目を伏せた。
「――エリック、今日はもう休みなさい」
カンバス卿はエリックの目を真っ直ぐ見た。
「承知しました」
エリックは、聞きたいことが山ほどあったが、今晩はひとまず休むことにした。
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