表裏の裏は不純だ

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「わざわざ閉店後に来るんだから、髪を切りにきたわけじゃないよね?」 「そうだね」 「会いに来てくれたのは嬉しいけど、随分待ちくたびれたよ」 和希は慣れたような所作で俺の腰に腕を回す。 それを自然に受け入れてしまう自分に呆れるのはもう何度目だろう。 「……最近仕事が忙しくてさ」 「嘘。本当は家族サービスしてたんでしょ?お前の嫁さん、そういうのうるさいから」 「……よく分かったね」 「広斗のことはなんでも知ってるよ」 俺の全てを見透かしているような言い方だ。 実際にそうなのかもしれない。俺は嘘を付くのが他の人より下手すぎるとよく和希に言われる。 「二階へ上がろうか」 こくん、と頷くと甘く細めた瞳で見つめられる。俺はそんな和希の表情にめっぽう弱い。 まるで俺をエスコートするかのように、腰に手を当てて階段をゆっくり上がった。
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