街に帰ると私のお葬式が行われていた

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 私が銭湯の無料券を使ってお風呂に入り出てくると、ちょうどアルベールが1人で歩いているところに出くわした。私の顔を見て、アルベールはぱあっと顔を輝かせる。 「テレサ! 久しぶり! 無事だったんだ……! 死んだって話が出たり、生きてたって話が出たりでもう何が何だか……」 「久しぶりっていうか数日ぶり……だけどそうだね、子供の数日ぶりは久しぶりだ。私はこの通り生きてるし、お風呂帰りなんだけど、アルベールは?」  駆け寄ってくるアルベールが眩しく見えて、私は目を細めた。一方、残念そうに眉を下げて、アルベールは私の顔を見返す。 「お風呂帰りって、もう家に帰っちゃうの?」 「もうって言うか夕方だから……ハインツさんの説得に時間かかっちゃったし。ほら、夜は魔物が活動的になるから出るなって言われてるから、もう戻らないと」 「それなんだよ」  秘密を打ち明けるように、アルベールはそっと私の耳元に顔を寄せ、囁いてきた。 「……夜にしか見られないものがあるんだけど、付き合わない? 砦に助けに行ってくれたお礼をしたいんだ」  夜、辺りが寝静まったころ、私はアルベールの部屋の窓をコンコンと叩いた。音のしないように、そっと窓が開かれる。そして、アルベールは私の顔を見て、ほっとしたように破顔した。 「ほんとに来てくれたんだ」 「いや、アルベールが1人で行くのは危ないでしょ。それに……」 「それに?」 「何があるのか気になるのは事実だし」  すると、くつくつと嬉しそうにアルベールは笑った。そして、はっとしたように口を押さえる。 「兄さんにバレないようにしないと」 「アルベールお兄さんいるんだ。いくつ?」 「14」 「へえー。どんな……」  さらに尋ねようとして、私は口をつぐんだ。アルベールが悲しそうな顔をしていたからだ。あまり仲は良くないのかもしれない。そこで私は慌てて話題を変えた。 「で、どこに行くの?」 「西の平原の、湖のほとりだよ」  部屋に招き入れられ、私はアルベールの示した地図を覗き込む。歩いて1時間ほどでたどり着ける距離だ。問題は……。 「思いっきり魔物の出る範囲じゃない……」 「大丈夫。あの辺は、夜は寝てる種類の魔物しかいないから」  そう言って、アルベールは自信ありげに微笑んだ。 「あ、そうなの……? てっきり私の魔物払いを当てにしてるのかと」  すると、アルベールははっきりと首を振った。 「違うよ。誘った理由は他にあるんだ」 「なに?」 「今は言わない。後で言うから」 「何それちょっと面白そう」
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