ワンダールームへようこそ

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 末松は占い師に、最近起きた不幸を全て話した。  会社の事業不振により人員整理が行われ、評判の悪い提携企業に出向を命じられた。  理不尽な仕事を押しつけられ……ついにはストレスで胃に穴が開いてしまう。  さすがにこの会社で仕事はできないと異動届を提出しようとしたら、それはできないと突っぱねられ、泣く泣く自主退社することになった。  新卒入社した会社を……僅か二年で退社。それがきっかけで、高校の時から付き合っていた彼女にも愛想を尽かされ、別れてしまう。  失恋と失業を、同時に経験したのだった。 「この不幸の連鎖を断ち切るには……」  占い師が激しくペンを動かした。  雑な字で、何やら書き込んでいる。  何を書いているのか確認できないけど、カタカナで書いているみたいだった。  ひとつの答えに辿り着いたのか、占い師は微笑みながらゆっくりペンを置いた。 「……全く知らない世界に、思いっきり飛び込んだ方がいいわね」  ほほう……と、末松は心の中で相槌を打った。  確かに末松は小心者で、何かに挑戦するということはしないタイプだった。  安定を好む末松は、自分から行動することを苦手としていたのだ。 「大丈夫、言う通りにしたら上手くいくから。ビビッときたら、何でもやってみて」  占い師の最後の言葉を胸に、末松は店を出た。  今にも止まってしまうのではないかと不安になるエレベーターの中で、自分が今やれることを考える。  とりあえず、新しい仕事を探すのは必須だ。  今まで経験していた営業職で探そうとしていたけど、そこからガラッと変えてみた方がいいのか?  全く知らない世界に飛び込むってことは……自分が想像できない職種や業種に挑戦した方がいいってことだろうか。  頭を悩ましながら、駅まで向かう。  歩きながらも、電車に乗りながらも、この先どうするか考えた。  どうせだったら、これまで経験してきたことを武器に転職したい……その方がすぐに体に馴染むだろうし、面接の際だってアピールがしやすいだろう。 「だけど……新しい世界に飛び込んだ方がいいんだもんな」  家に着きぼーっと考えていたら、占い師の言葉を思い出した。  同時にスマホに入っている写真も思い出す。 「ワンダールームへようこそ……か」
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