ワンダールームへようこそ

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『会社からパワハラを受けて退社。職を失った俺に愛想尽かした彼女もいなくなった』  末松は書いてて虚しくなった。  それでも、すぐに別の人が書き込みをくれる。 『それは可哀想に……会社を訴えた方がいいんじゃないか』  確かに……最初から俺を辞めさせたくて、パワハラが横行している提携企業に出向させられたんだ。  会社からはクビを切れないから、自主退社してもらうように厳しいルートに行かせられた。  精神的にも病んでしまったし、訴えてもいいレベルだ。  フォローしてくれたことに感謝しようとコメントを作っていたら、また別の人からの書き込みが増えた。 『大丈夫、すぐに良い人が現れるよ。ピンチの時こそ、しっかり傍にいてくれる彼女ができるって』  本当かな……こんな精神状態では、次の彼女のことなんかは考えられないし……何より前の彼女も性格が悪いわけではなかった。  ただ病んだ末松を見て、これ以上心配したくないという気持ちになったのだろう。  簡単に忘れられるわけではない……でも確かに、まだ次があるんだという気持ちにはなれた。 『ありがとう、みんな』  その感謝のコメントの後、『元気出せよ』とか『まだまだこれから』とか、とにかく励ましのコメントが多く届いた。  こんな匿名のどうでもいい人間に、こんなに温かいコメントが続々と届くなんて……末松はすっかり暗くなった部屋で、しくしくと感涙してしまった。 『もっと励ましたいから、詳細教えてくれよ』  誰かが書いたリクエスト通り、末松は事の経緯を全て書き込んだ。  涙を拭いて、この期間で起きた悲惨な流れを事細かに打ち込んでいく。  結構な長文を夢中になって入力していったので、キーボードを叩く音も強くなっていた。 「改めて見ると……俺って不幸な人間だな」  笑えない独り言を呟き、そのまま投稿した。  会社が事業不振に陥り、パワハラ気質な劣悪企業に出向を命じられて、そのまま言葉の暴力を受けた。  その結果精神的にも耐えられなくなり、自主退職することに。見ていられなくなった彼女からも別れを告げられる……ザッとこんな流れだろう。  より細かい内容を書いた途端、続々と住人が増えてきた。
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