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『事業不振!? 遅かれ早かれその会社は潰れるんじゃない?』
『彼女さんも弱っていく主が見てられなかったんだろうな……これからこれから!』
『会社も彼女も見る目がないと思う! 主さんは一生懸命頑張った!』
おお……末松は過剰にも思える後押しのコメントに、思わず絶句した。
まさか、ここまで励ましのコメントが伸びるなんて。
気がつくと夕飯を食べるのも忘れて、ワンダールームに夢中になっていた。
一人一人の励ましに、コメントを返す。
『このワンダールームの住人になって何年か経つけど、失恋と失業が同時にやってきた人は初めてだな。乗り越え甲斐があるよね』
このコメントには『乗り越える!』とだけ返した。
そして『いい人紹介してあげようか?』というコメントには『頼む』と返す。
「腹減ったなぁ……」
時計を見て、夜の九時を過ぎていたことに驚き、そして空腹なことに気がつく。
末松は家に常備してあるカップ焼きそばを食べることにした。
食べ終わるとシャワーに入って、またノートパソコンに向かい合う。
目を離していた間も、スレッドへの書き込みは留まることを知らなかった。
「まじかよ……こんなに励ましてくれるなんて……」
こんなに気持ちを前向きにさせてくれるなんて。
しかもみんな優しい。
そんなことあり得るのだろうか。何のために優しいコメントをくれるのか。
首を傾げながらも、スレッドのコメント数を伸ばしていった。
……深夜になって、ある程度の流れが止まった。
末松のスレッドに付き合ってくれていた住民も、さすがに眠ったみたいだ。
満足げに息を吐いて、ワンダールームのトップページに戻る。
すると、今勢いがあるスレッドという項目に、末松のスレッドが選ばれていた。
「まじ? こんなに注目されてるのか」
末松の中にある承認欲求が、満たされていく。
今まで末松は、誰かに注目されたことなんてなかった。
そんな人生の中で、まさかクローズアップされることがあるなんて。
末松はベランダに出て、夜の東京の街を見ながら、電子タバコを吸った。
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