言えない「ただいま」

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 弟、妹、ご近所のおばさん、そして……母さん!  みんな、汽車に向かって大きく手を振っている!  俺は車窓を開け、身を乗り出して手を振った。  気付いてくれた!  弟と妹は、こちらに向かって何か叫んでいるようだ。  しかし、遠すぎて聞こえない。  ご近所さんのおばさんは、たくさん野菜が入ったかごを持って、俺の方を見つめていた。  そうか、おばさんが俺の帰省を知らせたんだ……  いつまでも俺が家に帰ってこないから、みんな心配して探していたんだ……  母さんも、俺の方を見つめて、大きく手を振っている。  何か叫んでいるみたいだけど聞こえない。  「ただいま」が言えない俺で、ごめんなさい……  あぁ……それでも……それでも……  最後にもう一度、家族の顔を見ることができた。  家族に、俺の顔を見せることができた。  俺はこの光景を、この先もずっと忘れないだろう。  汽車は鉄橋を渡り、家族の姿は見えなくなった。  さようなら、みんな…………そして……ありがとう……
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