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アビーは唖然としていた。
常人を遥かに凌駕した、超々高速の剣術の四連撃。
速すぎて何が何だか分からなかったが、元団長であるアーバンを一方的に戦闘不能にするとは。
ソフィの実力は最早、団長クラスと言っても過言ではない。
「ソフィさん! 助かりました! 流石です!」
「アビーの言葉のお陰だよ。君は──」
「でも何かムカつく! 胸の大きさで挑発するとか本当にムカつく! なぁ~~にが、『哀れにすら思う』だ! ソフィさんって、普段からそんな風に女性を見ているんですね!?」
「見てない見てないっ!」
「ちょっと人よりも大きいからって…………う、うん……ま、まぁ大きいのは認めますが、調子に乗らないでくれませんか!?」
「乗ってない乗ってない!」
「ふん。口先だけなら何とでも言えますね!」
何故かソフィに突っ掛かるアビーだが、立ち上がると。
ソフィとハイタッチを交わした。
強くて、他人を気遣えて、自分を知っていて。
恋をして、今は自分も大事にする事が出来るようになって。
どんどん遠くへ行ってしまう友達。
「本当にムカつく女ですよね!」
ソフィの成長を認めているからこそ、ついアビーは毒を吐いてしまう。
だが、それが本心で無い事はソフィも気付いていて。
「アビー、この後どう動くのが正解だ?」
ソフィもまたアビーを認め、彼女の能力を頼りにしているのも事実だ。
アビーはフッと笑った。
そして腰に装備している『クォーツ』の一つを手に取り。
「先ずは、外部への連絡手段を回復させるのが先決ですね。地上に向かったカレンさんとジャジさん、冒険者の皆さんの所へ外からの援軍を送り込み易いですし……」
先程までソフィが立っていた場所を一瞥し、そこにフルゥの姿が既に無い事を確認した。
恐らくは、ソフィがアーバンを討ち取った時にスキルで逃げたのだろう。
(ソフィさんは、私の安全を優先してアーバンを攻撃した。あのウサ野郎の所在を突き止める為にも、塔の機能回復は必須の筈)
問題は、あの傷で何処に向かったのか。
と、いう事だ。
「ユノもアビーと同意見だったよ」
「っ! それなら、私達は下層の管理区域へ向かいましょう。ユノ君なら、強力な罪獣の出現を警戒して、先ずは下層に向かうと思います」
「分かった、行こう」
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