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 夜空には満天の星。明日というか、今日もいい天気になりそうだ。と、その時、丸い物体が天から見えた。ん?隕石?こっちに降ってこないか?  丸い物体はその輪郭を鮮明にさせながら、真輝に向かって降ってきた。  あっと思った瞬間、マイケルジョーダンもびっくりの、自転車のカゴの中に納まった。その謎の物体がカゴにはギリギリの容量だったのが幸いして、物体は吸い付くように納まった。  これはAIのNXではないか。でも、なぜ、空から降ってきた?いや、冷静になって考えたら、空から降ってくるわけがない。多分、公団住宅の住人がベランダからNXを落としたのだ。  真輝はNXを持ち上げる。すると、NXは息を吹き返したように目を点滅させた。バッテリーはまだ十分あった。 「あ、あの、動きますか?」  NXは目の点滅を素早く繰り返し、「あなたは命の恩人です」と声を放った。 「え、いや、あなたが勝手にカゴの中にすっぽり入ったんですよ」 「でも、ワタシは結果的に助かったわけですから、あなたが助けたことに変わりはありません」  ああ、無駄話をしてる場合ではない。真輝は早く帰ってシャワーを浴びたいのだ。 「今、あなたはとってもシャワーが浴びたい気分ですね?」 「え?」 「そう、顔に描いてあります」  さすがは天下のAIだ。AIが人の感情を読み取る時代になったとニュースでやっていたが、AIは日進月歩している。 「あなた、捨てられたのね?」 「はい。この上の住民に。きっと、ワタシが生意気だからです」  自転車を漕ぎながら、真輝はいつの間にか、NXとの会話を楽しんでいた。 「明日は急な雨が降ります。だから傘を持参してください」  部屋に着くなり、NXは言った。 「え、嘘でしょう。星が綺麗に見えているのに」 「信じるも、信じないも、あなた次第です」
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