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「冴子、いっつも、AIに決めてもらってるね」 「AIは便利よ。迷ったらまずAIに相談するに限るわ」  冴子は驚くことに、現在の恋人もAIに決めてもらったのだ。つまり、彼女にとってAIは親以上の存在だった。 「真輝もAIを駆使した方がいいよ。AIの言うことは絶対に間違いないから」  冴子はたまに読者モデルもしている。美貌は社内でもピカイチ。言い寄ってくる男性諸氏は数知れず。選択肢のない真輝とは違うから、AIに相談するのも頷ける。  でも、でもである。彼女が選んだ男性社員はうだつの上がらない、経理部の宮下くんだ。彼女とのマッチングには一番遠い男だ。  彼女の公認の恋人が宮下くんになったことで、しばらく社内は爆弾でも落とされたみたいに大騒ぎになった。  そりゃ、誰だって耳を疑うだろう。さながら王女様と一般市民が結びついたようなものだから。  油に火を注ぐように、冴子はSNSに宮下くんとのデートシーンをアップしている。それに対するリプはすごい。真輝も覗いたことがあるが、コメントやいいねはしていない。 「冴子、AIにばかり決めてもらっていると、自分で判断できなくなるよ」  エレベーターホールに向かいながら、真輝は心配そうに助言した。 「多分、真輝は強いし、自分を信じてるから、今まで自分で選択してきたと思う。でもさ、わたし、思うんだよね。眠れる森の美女の口が臭かったらと思うと...。一つ選択を間違えただけで、結果は大きく変わるわ」  最近、Xでトピックにもあがっている、「眠れる森の美女の口が臭かったら」が、女子の間で話題になっている。
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