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──じりじりとした陽射しが肌を焼く。赤茶けたグラウンド、四方を巡る白線が映える。
「はぁ……」
汗が顎先を伝って落ちる。まだ季節の上で夏になってないらしいけど、十二分に日差しは強い。
こうした、自然の中のしなやかさを直に感じるのは初めてだ。今まではずっと、季節の定かじゃない排煙を食らっていたから。
いやさ、光化学スモッグかも。そんな、論理性の無い思考を続けるのは、この妙な緊張感からか。
「いきますよー! 準備は良いですかセージュンくーーん!?」
呼ばれる。鬼塚星純は照り返しに片目を眇て声の主を見遣る。
距離、約18メートルとちょっと。少し盛り土がされた地面に立つ、緑色の長い髪。
少女だ。同じ意匠の制服を、男女の違いで互いに纏う。こちらは空色ブレザーで、あちらは一枚羽織らないでいる長袖のブラウス。
日の光を淡く反射する白、その右手にはこれまた、丁度良く収まる白球がひとつ。翻り、星純の持つ得物は木製の棒。
丸い円筒、ちょっとした円錐形。要は、対比構造としてとても分かりやすい。こちらはバットで、あちらはボールだ。
「レオくーーん? 準備はいいですか~~!?」
「……なんで俺はこんなことを?」
「あ、オーケーですね~~☆彡」
おまけにキャッチャーまでいる。しかも機ライオンに近いフォルムの巨躯。何か状況を掴めてないらしいが、多分気のせいだ、気のせい。
「なぁ、なんで俺、いきなり呼ばれて捕球する感じの流れになってんの? しかもなんで用意周到な感じで俺にピッタリのグローブまであんの??」
「シ! 集中させろ……キャッチャーがバッターに話しかけんじゃねぇ……!」
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