0人が本棚に入れています
本棚に追加
幾らかの沈黙が流れ、少女も落ち着いたと見た彼は餌撒きを止め、立ち上がりながら少女に手を差し出す。
「……じゃあ、行こうか」
「“やだ”って言ったら、どうする?」
男の掌を取ることなく、少女は座ったまま、そう訊く。
「う~ん」
頭を掻いて、頭を悩ませる男。
少女は俯いたまま動かず。
「“絵を描くのが好き”って言っていたよね?」
「・・・・・」
少女はコクリと頷く。
「そして“色んな景色を絵にしたい”とも言っていた」
「・・・・・」
「君が本気で嫌がるなら僕も無理矢理連れていく事はしないさ。
でも、ずっとここに残っていても何も変わらない……“君”も“景色”も」
「私からも取るんでしょ?
だって貴方は“集める”が仕事なんだから」
少し怒りの含まれた言葉。
「君はどうしたいんだい?」
選択を少女に委ねる。
「私は……私は……!」
「・・・・・・」
「まだ……やり残した事があるから……!もっと絵を描きたいからッッ!!」
「なら、行こう」
一度引っ込めた手を、もう一度少女に差し出す。
「……うん」
今度は確りと、その手を取るのだった。
最初のコメントを投稿しよう!