彷徨う君を探して

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 木漏れ日が射す、深い森の中。 「……うん」  木の幹にもたれ掛かり、うたた寝をしていた男は暖かい陽が自然の目覚まし時計と為って、目を覚ました。 「おっと、僕とした事が。眠りに来た訳じゃ無いのに……」  黒い服を身に纏い、片目が隠れてしまう程の長い髪を持った男。  罪悪感からかバツが悪そうにポリポリと頭を掻く。 「しないとな。よいしょっと!」  まだ少し微睡んだ目を擦りながら、ゆっくりと立ち上がり、歩き始める男。  その森の空気は澄み、濁りの一つさえない。風一つ吹いていないのにも関わらず、気候は過ごしやすい一定を保つ。 「ちゃんと集めないと」  道中、トカゲや小さな虫、視界に入った生物全てを掴まえては、逃がすこと無くポケットに詰め込んでいく男の奇行。 「……皆、平等だもんな」  哀しそうな顔で、そんな言葉を口にしながら。
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