彷徨う君を探して

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 どのくらい歩いたか、足を止めた男の前にいたのは大きな麦わら帽子を被った十歳くらいの幼女。  その少女は湖畔を囲うようにして並ぶ、朽ちた木の幹の一つに腰を下ろしては、膝元で絵を描いていた。 「待たせたね」  男が申し訳なさそうに少女の隣に座ると── 「もう遅いっ!」  ペンをスケッチブックに叩き付けながら少女は怒る。 「アハハ!悪かったよ。でも君がこんな森の奥に迷い混むからだろ?」 「何よ!私のせいだって言いたいの!?」 「そうじゃないさ。ただ、僕の仕事は君を含めた全ての生物をこと。 皆、平等なんだ。皆、僕にとって大事なお客様だよ」  “親子”というには何処か(いびつ)で、“他人”というには余りにも距離感が近くて。  断定出来ない二人の関係性。  でも、決してそこには無かった。
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