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まぁ、でも、かわいい子好きの陽キャの犀川のお気に入りなのだから、「みみちゃん」はかわいいんだろうな。そう俺は想像した。
ちなみに、野井も、小学校、中学校、高校、と。常にクラスの一軍だった陽キャだ。謎に陽キャに挟まれたまま、眼下に意識を戻す。
野井の勝手な予想どおり、女の子は振られたみたいだった。うつむきがちに駆け出していく。現場に残ったのは、王子ひとり。
かわいそうになぁと憐れんでいると、ほら、と野井が肩を叩いた。
「な? 振るって言っただろ」
「生意気なんだよなぁ。ま、でも、あの女子は微妙か」
「そ? 俺、ギリ有りだけど」
「えー、俺、なし」
「犀川、かわいい系好きだから。俺、ちょっとくらい不細工でもいけるよ。身体が良かったら」
「最悪すぎる。なぁ、一颯は?」
「え? ああ、俺?」
犀川に話を振られ、きょとりと首を傾げる。
勝手に告白の現場を覗き見て、有り無しを判じて遊ぶのは、さすがにちょっとアウトではないだろうか。ノリが悪いと言われたとしても、だ。
いや、まぁ、俺が覗き始めたんだけど。
――それに、人のことどうのこうの言える顔してないしなぁ、俺。
誤魔化すようにもう一度笑った瞬間。遠目でもわかるきれいな黒い髪が夏の風に揺れ、王子がこちらを振り仰いだ。イケメンどころのレベルじゃない、本物の美形。
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