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人のことをどうのこうのと言える顔じゃないとは言ったけど、俺は自分を良くも悪くもふつうだと認識している。
派手でもなく、女顔でもなく、当然、王子のようなきれいな顔でもない、どこにでもいるふつうの地味顔。野井や犀川はやたら俺の肩に肘を置くけど、そこまで小さいわけでもない。百七十はあるのだから、平均の範囲内だ。それに、まだ、伸びる予定だし。
それなのに、なぜか、俺は、昔から、変なおっさんに好かれやすい謎の特性を持っていた。
おかげさまで、高校二年生になった今。痴漢が出るから満員電車は嫌だと言う女の子の気持ちがわかる程度には、男嫌いになっている。
県立の高尾西高を選んだ理由も、ちょうどいい偏差値だったことともうひとつ。自宅から自転車通学が可能だったから、なのだから笑えない。
いや、まぁ、俺もその男ではあるんだけど。
「ただいま」
ガレージに自転車を止め、玄関の鍵を開ける。駅前の本屋で物色をしていたら、結局少し遅くなってしまった。じんわりと浮かんだ汗をぬぐい、框にリュックを下ろす。
――なんだ、友達連れて来てるのか。
弟のスニーカーと並んで置かれたでかいスニーカーに、二階に続く階段を見やる。声は聞こえないものの、たぶん、二階の自分の部屋にいるだろう。
その判断で一階の居間の扉を開けた俺は、「あ」と間の抜けた声を上げた。
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