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1.ケータイ小説みたいな恋は求めてない
「あ、遠坂くん。この前ちょっと言ったと思うんだけど。今日の相手の子、新人さんだから。優しくしてあげてね」
アルバイト先のコンビニエンスストアのバックヤードに入るなり、にこにこと店長の川又さんに伝えられ、俺は「はぁ」と曖昧に首を振った。
そう言われると、新しい子が入るという話を聞いた覚えがあるような。
「遠坂くんの一個下だったかな。高校生の男の子でね。遠坂くんと一緒で十七時二十一時のシフトで入ってもらうことになるから。仲良くしてあげてね」
小学校の先生のような言い草はどうかと思うが、俺は川又さんが嫌いじゃない。むしろ、わりと好きだ。
長年培われた俺のヤバいおっさんセンサーが反応しないし、奥さん大好き幼稚園児の娘さん大好き――たまに遊びに来るけど、愛想が良くてめちゃくちゃかわいい――の無害おじさんだし。人生初のアルバイトはここにしようと決めた理由のひとつ。
まぁ、とんでもないクレーム客の対応を引き受けたあとのしょぼしょぼとした背中はかわいそうなんだけど。
従業員共用のロッカーから取り出した制服のシャツを被りながら、「はぁ」と無難な相槌を繰り返す。
――でも、やっぱり、高校生の初バイトってこのくらいの時期が多いんだな。
俺も去年の夏休み前に始めたし、なんて。ちょうど一年前の日々を懐かしみつつ、素直でおとなしい子だといいなぁと想像する。あと、ついでに、コミュニケーションがふつうにできるタイプ。
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