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撮影で通されたスタジオには、緑の幕が張られていた。
後で内容に似合った背景を合成するためのグリーンバック。最初に見た時は一面の緑に戸惑ったけれど、今はもう慣れたものだ。
スタッフの指示であれこれ動き、リアクションを取る。いったいこの動きにはどんな背景がつくのだろう。
そう思った瞬間、緑一色だった場面に地獄のような映像が浮かんだ。
カメラが回っていない時に何度か瞬きをし、目をこすったりもしてみたが、映像が消えない。どころか、本来何もないそこから異臭や熱気が溢れ始めた。
周りは何も言わないからドッキリかと思ったけれど、それにして手が込みすぎているし、そもそもドッキリだとしても、今時こんな危険な演出はNGだろう。
もう緑ではなくなった背景は、そこに立つ演者の俺さえ蝕もうとしている。
肌が焼けそうな熱さと異臭。聞こえてくる唸り声。
この後スタッフにこっぴどく叱られることになるとしても、自分の命を最優先して、ここから今すぐ逃げるべきだろう。
撮影現場…完
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