撮影現場

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 撮影で通されたスタジオには、緑の幕が張られていた。  後で内容に似合った背景を合成するためのグリーンバック。最初に見た時は一面の緑に戸惑ったけれど、今はもう慣れたものだ。  スタッフの指示であれこれ動き、リアクションを取る。いったいこの動きにはどんな背景がつくのだろう。  そう思った瞬間、緑一色だった場面に地獄のような映像が浮かんだ。  カメラが回っていない時に何度か瞬きをし、目をこすったりもしてみたが、映像が消えない。どころか、本来何もないそこから異臭や熱気が溢れ始めた。  周りは何も言わないからドッキリかと思ったけれど、それにして手が込みすぎているし、そもそもドッキリだとしても、今時こんな危険な演出はNGだろう。  もう緑ではなくなった背景は、そこに立つ演者の俺さえ蝕もうとしている。  肌が焼けそうな熱さと異臭。聞こえてくる唸り声。  この後スタッフにこっぴどく叱られることになるとしても、自分の命を最優先して、ここから今すぐ逃げるべきだろう。 撮影現場…完
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加